近年の美容室では…
「ホットペッパーのネット予約だけでOK!」
そんなサロン運営も多いのではと思います。
。
しかし、実は・・・
電話予約より生産性が下がっている?
あるサロンオーナー様のそんな仮説、私なりに考察してみました。結論から言うと、その仮説にはメチャメチャ共感です!そんな前提で書いていきます。
。
【目次】
①ネット予約で生産性が下がっている?
②なぜ電話予約の方が生産性が高いのか?
③マンツーマンなら次回予約が解決策に?
④便利になることがデメリットになる?
⑤ただ“お客様任せのネット予約”は危険?
⑥では、どうすればよいの???
。
①ネット予約で生産性が下がっている?
これは「その通り!」と感じました。
。
後でも詳しく書きますが、予約が『お客様任せ』になるということは、美容師として『効率のよい施術時間の確保』ができていないとも捉えられます。もちろん、お客様の希望を優先することも大事です。
。
「空いてる!」と予約するお客様。でも…
「え!そこに入るの?」と微妙な美容師…
。
システム化されていると、どちらかというとお客様が予約を取りやすいようになるはず。確かに、お客様の「すぐ行きたい!」という気持ちに対する“機会損失”は減らせます。でも、逆にサロン現場での『回転率を上げる』ことは難しくなる。そう考えると、確かに生産性は下がるのかもしれませんね。
。
②なぜ電話予約の方が生産性が高いのか?
サロンで予約を調整できるから!でしょう。
。
営業中の美容室の電話で、以前は以下の様なシーンをよく見ました。
「あ、〇〇さん、こんにちは!ご予約ですか?15:00希望?え~っと…15:30でも大丈夫?それか、16:00とか。」
と、まだ予約表には余裕があるのに、お客様の希望を少しだけ調整して予約を確定させていました。
。
“ちょっと無理すれば入れられるな!”
“30分遅くなれば、前の1時間が空く!”
。
予約表をビッシリと四角に埋めるには、サロン側で予約の取り方の主導権を握る必要があります。完全な『お客様任せ』ではないから、サロンとしても「少しずらせば、もう1人予約取れる枠が増やせる!」というような調整ができる。これだけでも生産性が上がるでしょう!
。
③マンツーマンなら次回予約が解決策に?
主にアイラッシュサロン様でよくある例ですが、美容室でも参考になるはずです。生産性の高いアイリストの皆様は、時間管理に非常にシビアです。以下の図はある土曜日の予約表ですが、一日の予約がビッシリと埋まっています。
以下の優先順位で予約が埋まります。
1.常連さんの次回予約:8割
2.常連さんのLINE予約(自社予約):1割
3.新規のネット予約(ホトペ):1割
。
マンツーマン施術でお客様と接する時間が長いこともあり、とことん効率よく入客できるように、お客様と予約を調整して予約表を埋められています。美容室でも似たような例はあるのですが、私の経験ではアイラッシュサロンの方がこういう予約の効率化への取り組みは“上手い!”と感じます。
。
「いや。業種が違うから」とあきらめるのは簡単ですが、これをヒントに「生産性向上」を考えられるはずです。ちなみに、このアイラッシュサロンでは、単純な予約の効率化によるその日の生産性向上だけではなく、次の話にも少しつながりますが、常連客優先の予約で「高客単価のための時間確保」や「来店サイクルの安定」などのメリットも多く得られています。
。
④便利になることがデメリットになる?
ここまで書いた中で、やはりネット予約によって『生産性が下がる』という可能性は高いです。
。
お客様の「予約したい!」という気持ちを即座にアクションにつなげるには、今の時代ネット予約は必須!しかし、お客様の便利さとスタッフの予約管理の手間を省いたことが、逆にデメリットになっている部分もあります。主に以下の2点です。
。
1.新規も顧客も予約の優先順位が同じ
これは意外に気づいていないサロンが多い!③の予約表では1日の新規客は1割です。常連・顧客を次回予約で先に受け付けているから、そのスキマに新規の予約が入ってくる。新規も顧客も同じようにネット予約OKならどうでしょう?それにより「本来は常連さんが来るべき時間が、新規客で先に埋まる。」ことも増えます。リピート率と来店サイクルが下がる原因にもなり得ます。
。
2.集客サイト予約はコストが高くなる。
今や業界最大手のR社のサロン検索サイトHPBでは、ネット予約金額に対して2%の手数料が発生します。1万円の予約に対して200円です。これは何度も来ている顧客のネット予約にもかかり続けます。1万円分の予約が100人いたら100万円で、その予約手数料だけで2万円です。顧客が多いサロンだと、もっと予約手数料がかかっています。
。
便利さを得ているつもりが、実は顧客の来店機会を減らし、さらに予約コストも上がっている。これは、生産性が下がる以上に危険な状態では?
。
⑤ただ“お客様任せのネット予約”は危険?
何度か『お客様任せ』という表現を使っていますが、まさにこれが『電話予約より生産性が下がる』という大きな原因だと思っています。これまで書いた通り、次回予約・電話予約という“お客様をコントロール”できる予約によって、効率よく予約が埋まる体制が作られています。なので、完全な『お客様任せ』は非常に危険な状態かもしれませんね。
。
◎サロン側で誘導できる。
◎顧客が先に予約できる。
◎新規は後でスキマに入る。
。
その方が生産性が上がるはずなのに、真逆の『お客様任せ』な予約がネット予約で実現されている。何とも矛盾していますね。このことに気づけば、それに対する解決策を考えることもできますが、むしろ近年の美容業界では『ただのお客様任せ』が『当たり前の予約の仕組み』になりつつあります。
。
完全な“お客様任せ”&“集客サイト任せ”では、いつの間にか『お金をかけてラクをして、実は損している。』というビジネスモデルになっているかもしれません。
。
⑥では、どうすればよいの???
この状態を何とかできるのでしょうか?
そのためには『何事もバランスが大事!』
と、いうことがヒントになりそうです。
。
▼コストをかけて楽になるのは良いけど…
▼お客様が自由に予約できるは良いけど…
▼新規客が多く予約できるのは良いけど…
。
結果として『生産性が下がっている』のでは、ビジネスとして改善すべき点があるということ!
。
アイラッシュサロンの例では、次回予約>顧客優先自社ネット予約>ホトペ予約 という、顧客優先の仕組み作りがその改善策となっています。これをヒントにした、美容室の予約で生産性を上げる改善策とは?
。
『常連客で単価の高い人が優先予約できて、次に普通の顧客が予約できて、そのスキマに新規が予約できて、さらに集客も効率よくできる!そんな夢のネット予約システムが完成!』
。
ということは、残念ながらありません…
。
いずれはAIを駆使してできるようになるのかもしれませんが、今は人と仕組みとツールを上手く融合させて、生産性が下がらないように努力すべきでしょう。
。
その努力のひとつが『顧客優先予約』として成立しやすい『次回予約』です。ただ、なかなかサロンで浸透させづらいという声もよく聞きます。では他には?
。
あるサロンの事例を少々ご案内。
△ホトペ予約の開放は1ヶ月先。
△顧客用のネット予約の開放は2ヶ月先。
△次回予約は3ヶ月先まで受付可能。
△上記の予約のスキマに電話予約を入れる。
企業秘密なのでこのくらいにしておきます。
。
そのサロンオーナー様は・・・
「そもそも、美容室の売上の80%以上はリピーターで作られていて、半分は客単価1万以上とか2ヶ月に1回以内とかの上顧客で成り立つ。なのに、顧客を優先しないで、新規と同じように予約開放するのが間違っている。
新規の売上なんてウチは毎月10%も無い。しかも、新規の人ってだいたい『急に行きたい!』と思うじゃないですか。そういう新規を優先するから、顧客の失客につながるんです。
予約を開放する期間が違えば、顧客には『自社のネット予約の方が、常連さんのために先まで予約できるようにしてるから登録して』って言いやすいし、ウチはこれがベストかなと思っています。10年以上この仕組みですが、売上は徐々に上がっています。」
。
この言葉に『ネット予約でも生産性アップへの対策』が集約されていますね。
。
まあ、お店もスタイリストも成長中のサロンでは、上記の売上構成比率とは違うし、全てのサロンに当てはまる方法ではないかもしれません。でも、何年か経過して“サロンの売上が、顧客によって80%以上作られる”という状況になったなら。または最初からその状況を目指すなら、上記の仕組みを取り入れることも解決策のひとつでしょう。
。
ポイントは
◎顧客優先の予約の仕組みがある。
◎新規客は顧客のスキマで受け付ける。
◎顧客と新規で開放する期間を変える。
◎サロン側で調整できる予約の仕組がある。
こんなところでしょうか。
。
美容業界オンリー24年目の営業マンとして『ネット予約で美容室の生産性が下がっているのかも?』というテーマについて、私なりに考察&事例を紹介してみました。もし他に『こんな解決方法がある!』というような事例があれば教えてください。
。